生きることは忘れること

#東大ぱてゼミ /メルティランドナイトメア

歌詞の中に複数の時間スケールが混在していて、すなわち「十年前から待っていたわ」「もう千年前から待っていたわ」「一瞬だけ忘れないでよね」「一生だけ忘れないでよね」などがそうなのですが。

ひとつのイメージは、青い方が生まれてからの十何年間をずっと赤い方が見ていたというので、「君とは今日で五千回目」(5000÷365)とか、微妙なんだけど「驚く顔なら知ってるよ/いっつもそういう顔をする」とか。

もうひとつのイメージは、赤い方が結末を知っているようにみえることで、「愛したって君は僕を忘れる」とか。あるいは「泣きたいほど純情だ」もそうかな。冒頭の「案外そんなフューチャー」もそうだろう。たぶん赤い方にとってはこれは(なんらかの意味において)ありふれた経験/事態であるのではないかな、と思ったりもする。

「お母さんに何か言われたの?/クラスの誰かが冷たいの?」には見守るという感じがある。子供が育っていくのを見守る大人、それはたぶん、個々の文脈に即した個別的な営みとしても語りうるし、その繰り返しとして総体としての人類の営みとしても語りうるだろう。すると、ここまでのイメージは、その両面を捉えているともいえそうだ。(蛇足なんだけど、個々の文脈に貼り付いている感傷の解像度を保ちつつ遍在するというイメージは、「魔法少女まどか☆マギカ」第12話をちょっと連想させる)

で、そうして遍在して繰り返されていくというのは、世界への編入を促す外部性についての話がまず思い浮かぶのだけど、この曲においてはどうもそうではないようだ、と。それで、編入の営みの中でともすれば不可視化されがちな、あまり顧みられない「以前」を(けっしてそれが永遠に続かないことを受け入れつつもなお)愛する歌なのではないかなと思ったのだ。